愛知教育大学附属岡崎中学校 保健体育科研究室様より、記録に残る限り日本で初めてコーフボールを中学校保健体育の授業に導入いただきました。
その際いただいたレポートを以下に紹介します。
一部抜粋・改変
1 授業の様子
(1) 導入
東京オリンピックでスポーツに注目が上がった際に、国際オリンピック委員会承認競技で、新規追加候補種目であり、過去のオリンピックの公開競技として実施されたコーフボールを紹介した。
(2) 繰り返し行った試しのゲーム
まずは男女混合でチームを入れ替えながら試しのゲームを何度も行った。その際、初めに提示したルールは次のとおりである。
<初めのルール・環境>
- ドリブル禁止
- パスのみ
- 身体接触禁止
- ボールを持ったら2歩まで
- バスケットボールのハーフコート
- ゴールの高さ3m
- 公式ボール
- (男女のマーク制限やディフェンドのルールは、今回採用しない)
パスをつなぐことが必須であるため、チーム内でボールがよく回り、誰でもゲームに参加することができるので、多くの子どもが意欲的にゲームに参加することができた。ボール操作が苦手な子どもも「これならいけそう」と、手応えを感じている様子であった。チーム替えのために集合してくる子どもは、息をあげながらも充実した様子で集まってきた。「楽しい!」「簡単そうに見えて奥が深い」「頭痛かったけど、コーフボールやりたいから学校来た」と、子どもは早くもコーフボールの魅力にとりつかれた様子であった。
(3) どのチームにも芽生えた「空間」の意識と役割の重要性
今回の実践は「俺たちのゲーム」と銘打ち、自分たちで不平不満を解消し、自分たちでルールをつくり、誰もが楽しめるゲームづくりを目ざしている。ハーフコートでゲームをすると攻守交代が、訳が分からないという問題が生まれたため、ゴール周りに円を描き、そこをトランジションラインとすることを助言した。身体接触がどうしても起こってしまう問題に対しては、ワンハンド分離れようという生徒の意見が採用された。
ゲームを進めていくうえでのルールがおおよそ定まった段階で、チームを確定した。決まったチームでゲームを繰り返すと、多くのチームの子どもの授業日記に「みんなが止まっているとパスの出しどころがない」「空いているところに動いてパスをもらう」と空間を意識した記述が見られた。ゲームの様子を見ても、まだ360°を有効に使えていないものの、ゴールの反対側へのパスなども見られ始めた。それと同時に、「役割」を決めることの重要性にも気づき始めるチームが表れ始めた。リバウンドをとる役、パスを回す役、シュートを打つ役と分担しているチームは効率的に攻撃をすることができている。ただ、まだまだシュート精度が低く、決定的な状況をつくってもゴールできないもどかしさに、シュート練習をする必要性を感じ、休み時間や授業の前に早めに体育館に来て、シュート練習をする姿が見られるようになった。
(4) 追究は続く
チームとして戦う中で、作戦や戦術を考えるチームが出始めた。まずは、誰が誰にマークにつくかという守備の戦術を考え、ゴールする確率が高い子どもにできるだけシュートをさせないように守るチームが出てきた。攻撃では、先述のとおり、役割分担をしてリバウンドを確実にとることや、パスを回す順番を決めて、パターン攻撃をするチームも出てきている。
今後、どのチームにも共通して問題になってくることは「得点しやすい形をいかにして意図的につくるか」というものになるであろうと考える。コーフボールのよさを生かした授業展開を意識し、授業を進めていく。
2 授業をとおして感じたコーフボールのよさ
- ドリブルがないことで、ゴールに迫るためにチームでの連携が必須になる
- ゴールを決める難易度が高いことを利点として捉えると、「誰もが簡単に入らない」から、「バスケットボール部の子どもだけが得点をする」という戦術が、チームのための最適解となりえない状況をつくることができる
- コートを360°全方位使えることで、空間を意識した追究課題を設定することができる。
- シュートを打つことだけでなく、リバウンドをとること、パスを回すこと、ディフェンスをすることなど、比較的役割をはっきり意識することができる。そのため、それぞれの役割を果たしながらゲームに参加することで自己存在感を感じることができる。
3 今後の計画
コーフボールは、ゴール型球技の特性である「空間を使った攻防」について追究していく学習に適している種目である。また、チーム意識の高まりも期待することができる。今後もゴール型球技の学習として、中学1年生を中心に継続的に授業で扱っていきたいと考えている。
コーフボールは、ルールの特徴から、バスケットボールよりもチームワークの養成や、空間を使った攻防を学習していくために適したスポーツであるという認識があるという評価をいただきました。
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